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2026年7月1日 掲載
Art is Happy!
世界に一点だけの物語を、あなたの日常へ
◼︎ 創作の原点:Art is Happy !
私にとってアートとは、豊かな心をさらに豊かにするための「装置」です。このモットーには、日常に溶け込んだ一枚の作品から感性が広がり、喜びを増幅させていきたいという願いを込めています。真っ直ぐな想いを表現に託し、鑑賞者の日常に小さな喜びの「縁」をもたらす存在を目指しています。
◼︎ 表現のアイデンティティ:唯一無二の「物語」を紡ぐ
建築を学び空間への視座を養った後、版画の世界へ転じました。独自技法「木版モノタイプ」は、版木の上で絵具と対話し、一摺りずつ手で仕上げる手法です。版画特有の偶発性と色彩の重なりから生まれる作品は、二度と再現できない「世界に一点だけの物語」を宿します。絵画としての力強さと、唯一無二の価値を大切にしています。
◼︎ モチーフへの視線:愛らしさと生命の深淵
動植物や縁起物を入り口に、その造形の奥に潜む相反する要素を描き出します。強さと儚さ、愛らしさと影、そして幸福感の中にのぞく遊び心。ひと目で感じる喜びから、じっくり対話することで見えてくる生命の躍動まで、多層的な感動を届けたいと考えています。
◼︎ 新画号「縁(えん)」に込めた覚悟
2026年夏、私はアートが人と人を繋ぐ幸せな「縁」となることを願い、新しい名を背負います。作品が誰かの心と共鳴する瞬間は、かけがえのない「一期一会の縁」に他なりません。対象との出逢いや、制作を支えるすべての巡り合わせに感謝し、一生をかけて心の奥深くに届く表現を追求し続けること。それが「北嶋 縁」としての新たな覚悟です。まだ見ぬ「縁」を、世界へ、そしてあなたの日常へ結んでまいります。
2026年7月
版画家 北嶋 縁|EN KITAJIMA
Published: July 1, 2026
Art is Happy!
Bringing a one-of-a-kind narrative into your everyday life.
◼︎ The Core of Creation: Art is Happy!
To me, art is a “device” designed to enrich our hearts and minds. Through this motto, I express my desire to amplify joy, allowing a single artwork woven into daily life to expand the viewer’s sensibility. By pouring my genuine thoughts into my expression, I aim to create pieces that bring a subtle yet meaningful connection—En—and moments of joy to everyday life.
◼︎ Artistic Identity: Weaving a One-of-a-Kind “Narrative”
After studying architecture and developing a unique perspective on space, I transitioned into the world of printmaking. My original technique, “woodblock monotype,” involves a deep dialogue with paints directly on the woodblock, with each print finished meticulously by hand. Born from the inherent serendipity of printmaking and the rich layering of colors, each piece holds a “one-of-a-kind narrative” that can never be replicated. I deeply value both the visual power of painting and the irreplaceable worth of the unique print.
◼︎ Perspective on Motifs: Charm and the Depth of Life
Using animals, plants, and traditional lucky charms as entry points, I depict the contrasting elements hidden behind their forms: strength and fragility, charm and shadow, and a sense of playfulness nestled within happiness. I wish to deliver a multi-layered emotional experience—ranging from the immediate joy felt at first glance to the vibrant pulse of life that reveals itself through deeper contemplation.
◼︎ The Resolve Behind My New Name: “En” (縁 – Connection)
In the summer of 2026, I will embrace a new name, carrying the hope that art serves as a joyful bond—En—that connects people. The moment an artwork resonates with someone’s heart is nothing less than a priceless, once-in-a-lifetime encounter. Deeply grateful for my encounters with my subjects and all the serendipitous events that support my creative journey, I am resolved to spend my life pursuing expressions that reach the depths of the soul. This is my new commitment as En Kitajima. I look forward to weaving yet-unseen connections out into the world, and into your everyday life.
July 2026
En Kitajima | Woodblock monotype artist
2026年7月1日 掲載
「版」と一回性
木版モノタイプによる身体性と祝祭性の探求
北嶋 縁|EN KITAJIMA
1|版画における一回性の探求
私の制作の核にあるのは、「版」という複数性を前提とした媒体を用いながら、その内部に不可逆的な身体性を介入させることで、一回的な画面を成立させる試みである。独自技法である「木版モノタイプ」では、版木の上で油絵具を重ね、摺りの工程ごとに手作業で画面を変化させる。その過程では版木の木目、圧力、絵具の粘度、支持体との摩擦といった要素が絶えず変化し、一度きりの表現となる。ここで版は、複製のための装置ではなく、偶然性や身体的痕跡を受け止める場として機能している。
版画は本来、複数性と再現性を持つ表現形式である。ヴァルター・ベンヤミンは、複製技術が芸術作品の持つ「アウラ」を変容させうると指摘した[1]。また、アンディ・ウォーホルはシルクスクリーン技法を用いて既製イメージを機械的に大量印刷し、ポップ・アートの中核に「量産性」を持ち込んだ[2]。これに対し私の実践は、複製文化以後の視覚環境を前提としつつ、版画という媒体の内部に改めて一回性と物質性を回復させようとする試みである。版画と絵画、複製と唯一性という一見相反する概念の往還の中に、自身の表現領域を見出している。
2|空間構成と視覚文化の往還
画面構成においては、日本美術史における大胆な視線誘導を重要視している。とりわけ葛飾北斎の《富嶽三十六景》では、大波が画面からはみ出すような切り取りや強い遠近法が見られ、視覚的に非常にダイナミックである[3]。私も建築を学んだ空間認識を活かし、対象を単体で完結させるのではなく、画面全体のリズムや視線の流れをデザインする。これにより、モチーフと背景、空と大地といった異なる要素を一枚の画面上で調和させることを目指している。
一方で、木版モノタイプ特有の重層的な色彩表現と痕跡への関心も強い。油絵具の滲みや掠れ、厚く盛り上げた筆致の凹凸には、絵画的な物質感があらわれる。そこには、フィンセント・ファン・ゴッホが厚塗りの渦巻く筆致で内面の激しい感情を表現したように[4]、独特の生命感が宿っている。たとえば『星月夜』で見られるような渦巻く夜空のパターンは、単なる装飾ではなく、内面的な感情の強度そのものを伝えるものとして語られてきた。私も木版という日本的技法を基盤に、西洋近代絵画の身体性と色彩感覚を往還させることで、異なる視覚文化を接続し、多層的な構造を試みている。
3|モチーフと祝祭性
作品に登場する動植物や縁起物は、単なる記号的要素ではない。そこには生命の力強さと儚さ、愛らしさと不穏さ、ユーモアと緊張感が同時に内包されている。鑑賞者にはまず直感的な親しみや楽しさを感じてもらい、その後に画面の奥に隠された複層的なテーマへと引き込まれる構造を意識している。ポップな色彩や祝祭的な雰囲気は、そうした視覚的な入口として機能する。
また、版木に刻まれた線や摺りの偶発的な痕跡は、視覚効果にとどまらず、制作時の身体性や時間性を画面に定着させる役割を持つ。厚塗りや重ね刷りによって生じる凹凸は、鑑賞者に絵具の物質感を物理的に感じさせ、デジタル表現では得られない手触りを伝える。この「触覚的な絵画体験」は、作品の持つ祝祭性やエネルギーをより直接的に表現している。
4|「縁(EN)」という関係性
作品は本来、置かれる空間や鑑賞者との相互作用によって意味が開かれる動的な存在である。新たな画号「縁(EN)」には、人と作品、人と空間、人と人とのあいだに生まれる接続や共鳴への意識が込められている。
ニコラ・ブリオーの「関係性の美学」においては、作品は人間関係や社会的文脈を生成する契機とみなされる[5]。私自身も、作品が展示空間に介入するだけでなく、鑑賞者の生活空間へ移行していくプロセス全体を表現の一部と捉えている。すなわち、作品は美術館やギャラリー内だけで完結するものではなく、生活空間に置かれることで新たな意味や物語を生み出し、鑑賞者の記憶や感覚と結びつきながら変化し続けるものである。
5|制作の根幹としての「縁」
本制作における究極の目的は、「完成された物体」を提示することではない。版木、身体、空間、鑑賞者の各要素が交差することで生まれる、一回的な経験の場を立ち上げることにある。作品を通じて新たなつながりを創出し、日常の風景の中にポジティブな祝祭的変容をもたらすこと。これこそが、北嶋 縁としての表現の根幹であり、私の制作における真の目的である。
註(注釈・出典文献一覧)
[1] ヴァルター・ベンヤミン「複製技術時代の芸術」(佐々木基一 編集解説、晶文社、1999年)を参照。
[2]「アンディ・ウォーホル展:永遠の15分」カタログ(森美術館、アンディ・ウォーホル美術館/美術出版社、2014年)を参照。
[3] 永田生慈「もっと知りたい葛飾北斎 改訂版」(東京美術、2019年)を参照。
[4] 圀府寺司「もっと知りたいゴッホ 改訂版」(東京美術、2025年)を参照。
[5] ニコラ・ブリオー「関係性の美学」(辻憲行訳、水声社、2023年)を参照。

